月末特別配信 2023年5月総合版
G7の極東戦略拠点化する日本と外圧
SDGsは「暇ネタ」に過ぎない
2023年5月にG7広島サミットが行われた。全体を通じて高評価したいのが気候変動、カーボン・ニュートラル、再エネなどのSDGs系テーマの優先度が低かった点だ。
そもそもSDGsは平時の時の「暇ネタ」に過ぎない。エネルギー危機や東西冷戦の深刻化という「戦時」において優先順位が下がるのは当然のことと言えるだろう。
「暇ネタ」であることを認めたくない意識高い系無能層は怒髪天なのだから笑いが止まらない。
特に日本の強い主張で石炭火力発電の廃止を明言させなかった点は高く評価したい。日本が開発した最先端の石炭火力発電システムはEU圏内のそれとはまったく違う。NOxやCO2の排出量は極めて低い。
世界にはエネルギー安全保障の観点から、どうしても石炭に頼らなければならない国が多くある。現在、エネルギー危機でヨーロッパで続々と火力が復活しているのはその典型例だ。世界の火力発電システムを日本製にリプレイスすることで大規模なCO2削減が可能になる。
COP26では石炭火力発電持続を明言した岸田文雄総理に「化石賞」なるものが贈られ、日本のリベラルメディアも猛批判を繰り返した。これこそ「無知」と「無能」のなせるわざといえるだろう。
広島サミットでの石炭火力発電廃止否定が「脱・脱化石燃料」という現実路線に戻る貴重な一歩となることを期待したい。
ハイリスク・ハイリターン時代に必要なテーマは…
G7、すなわち「西側」は日本列島を極東戦略の最重要拠点にしようと望んでいる。来月以降に解説していく予定だが、軍事だけではなく、経済、生産、技術、情報など多方面での拠点化が進む。
リスクを負うことではあるが、恩恵は計り知れない。実際、すでにTSMCの工場が新設される熊本を始めとする九州全体は好景気に沸いていると聞く。
TSMC採用募集サイトより
その一方で米中が軍事衝突した際には攻撃対象になるリスクを負うのだ。
2023年5月4日配信の記事で解説したようにハイリスク・ハイリターンがすでに具現化しているのである。
「リスク」の一つが「外圧」だ。拠点化する見返りに、「自分の価値観を共有しろ」という植民地主義者の声が大きくなる。ラーム・エマニュエル駐日大使はその典型例だ。「もの言う大使」の正体は、ブッシュ政権で暗躍したネオコンのそれにしか私には見えない。
敗戦後の日本は諾々と「外圧」に応え続け、日本独自の文化、商習慣を棄ててきた。同じ事を繰り返してはならないと思うのは私だけだろうか。
これからの日本人に要求されているのは外圧に対する「土下座」ではなく、「リスク共有」だ。戦後の日本人は「リスク分散」を得意としてきた一方で、「リスク共有」を苦手としてきた。
リスク分散とは「リスク逃避」、リスク共有とは「リスク対峙」と言えばわかりやすいだろうか。この「リスク共有」こそ、2030年に向けたテーマになるのではないかと私は考えている。
2023.05.04
ゴールデンウィークの穏やかな休日を切り裂くニュースが、NATOの拠点を東京に設置である。「猫組長POST」では日本が東西新冷戦のフロントラインになることを主張してきたが、それが現実になるということだ。ハイリスクの代価としてハイリターンを得るのが最前線のうま味だ。はたして日本は暴力経済成長を遂げることができるのか――。
2023.05.07
統一地方選を経て改めてわかったのは、立憲民主党が野党ばかりか有権者にとって「不要」であるという事実だ。今回の事態をESG投資という視点から考えると、立憲が有権者に提案している「ビジネスモデル」はもはや通用しないということが導き出せる。結局3年ぶり5度目の分裂、党名変更の未来しかないのではないか――。
2023.05.13
G7広島サミットが開催に向けて、日本国内ではサミットに併せて大幅後退させたLGBT法案を提出する「なんちゃって劇場」が繰り広げられている。注目したいのは「招待国」で、不透明な時代の一つ先を読む重要なヒントだ。陣容を考えればG7が対中分断に本気で進んでいることがわかる。
産業のキーデバイス「半導体」の製造技術・製品・部材を中国に再輸出させないということは、「中国にモノを作らせない」ということになります。
当然のことながら代替生産地が必要になりますが、その筆頭候補地域がASEANです。とはいえASEAN諸国は中国との摩擦を避ける傾向が強い。中国が怒ると南沙諸島のように実効支配されてしまう可能性が高いからです。
そこで、キーになるのが日本ということになります。
また南太平洋の島嶼国はG7と中国がプレゼンスのオセロを行う最前線。ここを落とされるとアメリカはハワイまで影響力を後退せざるを得なくなってしまうからです。
この戦略はかつて日本がアメリカに対して行ったことそのものなのですが、広島サミットを通じて日本が逆の立場で中国の進出を防ごうとしているところが面白いところではないでしょうか。
2023.05.15
広島サミット招待国の中で特に注目したいのが韓国だ。15年ぶりにトップ同士のシャトル外交が復活し、日韓関係「新時代」が強調されている。しかし「雪解け」のたびに「新時代」ではたまらない。向こうはゴールポストを動かすどころか生産する文化なのだから。韓国と付き合うことは「巨大なリスク」が伴う。サムスンの半導体開発拠点日本設置を例に「リスク共有」の在り方を考えたい。
2023.05.29
G7も終わり、現在、国会ではLGBT法案の審議が続いている。法案提出から現在まで「外圧」をかけているのがラーム・エマニュエル駐日大使だ。「物言う駐日大使」の正体は令和の時代にあってまだ日本をアメリカの属国だと信じて疑わない「植民地主義者」――氏の言動を分析した私の結論だ。このLGBT法と対称的な「健全な外圧の形」が、ジャニーズ事務所が性犯罪を認めたことではないか。
『駐日アメリカ大使「半導体で中国に助勢はしない」 ――』ではエマニュエル氏が、半導体のサプライチェーンについて語っています。
エマニュエル氏は、半導体の製造に必要な装置や材料を中国に輸出することは、ライバルである中国に助勢することになるとして、アメリカはそのようなことはしないと明言。また、半導体のサプライチェーンを維持するためには、日米を含む同盟国間での団結が重要だと述べています。
エマニュエル氏は、日米が協力できる分野として、半導体の研究開発や人材育成、セキュリティや規制などを挙げ、半導体のサプライチェーンに関して、中国に対抗する姿勢と日米の連携を強調しています。
しかし日本の半導体産業を弱体させたのも、中国に積極的に投資を行い半導体産業を成長させたのもすべて「アメリカ」です。
LGBT法案の問題は感情や将来的な危機ではなく、日米の外交問題になってしまったのではないでしょうか。植民地主義者の主張を聞けば、今後、日本は土下座が連続する「安倍以前」の日米関係に戻ってしまいます。
その意味でLGBT法案を「今」通すわけにはいかないのではないでしょうか。
次回はそのことについて整理して行きたいと思います。お楽しみに。
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2022年
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