ドナルド・トランプ暗殺未遂 一発の銃弾が起こした「暴力の世界再編」

大統領選を4カ月後に控え共和党候補のトランプ前大統領を銃弾が襲った。このニュースは血まみれになりながら右拳を突き上げた写真と共に瞬く間に全米、そして世界へと配信。「もしトラ」から「トラ確」となった。凶弾の破壊力はトランプ氏の右耳を貫通しただけではなく、世界の暴力構造が劇的に再編するほど。その衝撃波でメガネこと岸田総理も完全に吹き飛んだ――。
猫組長 2024.07.18
誰でも

暴力再編のドミノが始まる

拙著『反逆せよ!愛国者たち』(ビジネス社)が、いよいよ2024年7月18日に発売。即重版が決まった。

これも皆さんのおかげです。ありがとうございます。そこで今回は特別に「はじめに」を公開しよう。少しでも興味を持った方は是非、購入して欲しい。

はじめに

 日本唯一の同盟国、アメリカと中国の緊張が日に日に高まっている。民主主義国家において警察、軍という「暴力」を行使できるのは政府だけだ。ところが2024年7月現在、政治は脳死状態に近い停滞をしている。

 その根源的な原因が、岸田文雄総理が作った岸田政権だ。やや正確な責任追及をすれば、自民党内の岸田派と麻生派、すなわち「宏池会」が主犯だ。

 本書刊行時点で政権を握っている岸田政権を作ったのは亡くなった安倍晋三元総理である。当時は「岸田=ワンポイント」の意図で任せたが、あろうことか当人と岸田派が色気を出して自民党自体の支配を目指すようになった。

 岸田総理が元々、「国家観」を持ち合わせていないことは、手綱を握っていた安倍元総理逝去後、LGBT法案を通過させたことで露見する。

生物としてのヒトが増えるためには卵子と精子の結合がなければならない。ところがLGBTは男女の関係を否定する「カルト」だ。このカルトが広く蔓延すれば、少子化に向かうことは「おしべとめしべ」を学ぶはずの小学校4年生でも理解できるだろう。

 ところが岸田政権は少子化対策に大量の予算を投下する一方で、LGBT政策に大量の予算を投下する。真逆の政策を同時に成立させようとしている時点で、合理的かつ理性的であることを自身に課している私には、狂っているとしか見えない。

 こうした狂った政策を平然と行うのは自民党が「保守政党」ではなく、「国政政党」だからだ。「はぁ?」と思う方は「自由民主党」を英語に直してみて欲しい。

 The Liberal Democratic Party

 自民党こそ戦後日本を牽引してきた「リベラル政党」ということがわかるだろう。私たちが「自民党=保守」と思い込んでしまっている。理由の大半は安倍元総理だ。 

 第二次世界大戦後、国体としての「保守」は民族自治権、すなわち国や地域に住む人たちが自身で意思決定を行う権利を有することの実現を目的にしてきた。ゆえに、そもそも自民党結党の意義は「自主憲法策定」にあったはずだ。ところが歴代の自民党歴代総裁、総理の中で本気で「憲法改正」に取り組んだのは、安倍元総理ただ1人。

 その安倍政権が約8年弱続いたことで、あたかも自民党が正当の保守政党であると誤解をしてしまったのだ。エセ保守・宏池会がリードする岸田政権によって日本に生まれたのがLGBT問題と、移民問題である。

 本書はこれらのテーマを暴力経済、地下社会的視点・歴史を土台にしながら一直線に結びつけた。さらに、安倍政権の再評価を行い、ここから先の自民党が「日本」を牽引する資格がないことを導き出している。その上でエセ・保守である宏池会型自民に対峙するべく立ち上がった日本保守党の意味と意義を展開した。

 日本列島にとって喫緊の問題は台湾だ。地政学というフィルターを通過すると台湾・日本は一衣帯水の関係で、中国が台湾に侵攻するということは日本侵攻と同じ意味になる。

 この中国の列島支配の脅威に立ち向かったのが安倍元総理なのだが、その行った外交・安全保障・経済安全保障の正体を解説した。

 このような混乱の原因は実はアメリカにある。元々アメリカは「敵を作りながら自国を繁栄させるのが得意」という厄介な国家だ。中国を育てたのは実はアメリカである。日本列島の今後を読み通す意味でも、アメリカの「前科」をつまびらかにした。

 本書を出した意義は政治に対する問題意識を超えた憤りが原点だ。だからといって立憲・共産党に与党を任せたくない。だが宏池会・自民にも政権を任せることはできない。

 読者諸氏におかれては、私の持つジレンマや憤りを共有して、次の投票に向かって欲しい。政治とはバカをコントロールするゲームだが、本書を読んでくれた皆さんはバカにコントロールされるバカではないはずなのだから――。

(「はじめに」はここまで)

さて、前回の『「ソヴィエト蓮舫崩壊」が示す「安倍元総理の悲願」を軸にした政界再編の可能性』では、次期衆院選で「改憲」を軸に政界が再編される可能性を導き出した。今回は急進する世界再編について解説する。引き金となったのはトランプ前大統領を襲った一発の銃弾だ

驚くべきは銃撃直後、流血しながら拳を天に突き上げたトランプ氏の胆力である。

爆弾を投げられて捕まった宇宙人のごとくSPに連行されたどこかのメガネとの差は歴然だ。

凶弾が吹き飛ばしたのはトランプ氏の右耳だけではない。破壊したのは世界のバランスである。その衝撃力で、現在の政権与党・岸田政権は事実上、レームダック(死に体)となった。大国の政権転換に現政権は対応できず、ポスト岸田の有力候補の脱落も決定した。LGBT政策を押しつけ、イスラム・ファーストを掲げながらハマス戦争を防ぐことさえできなかった無能大使、ラーム・エマニュエル氏の退場は日本にとって福音でしかないが……。

世界の暴力構造再編ドミノの号砲だ。まずは安倍晋三元総理を殺害したプータロー・山上徹也。岸田総理爆殺失敗犯の無職・木村隆二。今回の狙撃犯トマス・マシュー・クルックスなど「虚無の殺人者」が増殖する背景を炙り出していこう。

「虚無の殺人者」が増殖

大統領選への出馬を目指していた、共和党のトランプ氏が東部ペンシルベニア州バトラーでの選挙集会で銃撃されたのは2024年7月13日のことだった。狙撃犯は1年前から地元の射撃クラブに所属していたトマス・マシュー・クルックス。

父親所有のAR15を使用し、約130メートル離れた場所から演説中のトランプ氏を狙った。

AR15は軍用アサルトライフルM‐16の民生版で軍用と違ってフルオートできないようになっている。使用する5.56ミリ弾は高速弾で防弾ジョッキを貫通する能力を持つが、軽量であることから横風などに弱く、遠距離射撃には不向きという評価だ。

それでも放たれた凶弾はトランプ氏の右耳を貫通しただけで済んだのは、まさに奇跡である。射撃後、犯人はカウンタースナイプによって即座に射殺された。

驚くべきはトランプ氏の胆力だ。初回の一撃ですぐ伏せて自ら次弾に備えた。シークレットサービスが取り囲んだが、立ち上がると聴衆に向けて拳を高く突き上げたのである。

対称的なのは2023年4月15日に外遊先で爆弾を投げられた岸田文雄総理だ。投げ込まれた物体を見つめ立ち尽くしたところをSPに押し倒され、捕まった宇宙人のごとく連行されるように避難した。

2022年7月8日に安倍晋三元総理を殺害したプータロー・山上徹也、岸田総理爆殺失敗犯の無職・木村隆二、そして今回のトマスは「思想性が皆無」という点で共通している。これまでのテロルは右であれ左であれ、強烈な思想的使命感に突き動かされていたのと対称的だ。すなわちこの連中はテロリストではなく、ただの殺人者に過ぎない。自分たちの生き方の問題で抱えたトラブルを八つ当たり的に「象徴的な存在」にぶつけるという意味では「虚無の殺人者」と呼ぶべきだ。

この「虚無の殺人者」の増殖の根底にあるのが「分断」だと私は考えている。

トランプ暗殺は2020年に始まっていた

整理したいのが2020年大統領選の結果である。

アメリカの大統領選は有権者が候補者に票を投じる直接選挙ではない。全50州と首都ワシントンDCの計51地域に割り振られた538人の「選挙人」を選び、その選挙人が後日、地域を代表して候補者に投票する仕組みだ。

2020年大統領選でジョー・バイデン大統領は306人の選挙人を獲得、対してトランプ氏は232人に留まった。これだけみればバイデン氏の圧勝ということになる。

ところが得票数で見るとバイデン氏51.3%に対して、トランプ氏46.8%と相当拮抗していることになる。そのことは上院の多数派が共和党、下院の多数派が民主党という「ねじれ」の発生に表れている。

アメリカは一州一国の共和制だが、知事選においては共和党27に対して民主党23となった。

すなわちアメリカの世論は完全に分断しているということだ。

ご存じのようにアメリカは二大政党制である。拮抗した「分断」は二大政党制が健全に成熟したことを示すはずなのだが、皮肉も「暴力発生」の温床となっている

2020年5月の妊婦に銃を突きつけて強盗した前科がある黒人男性を白人警察官が殺害した「ジョージ・フロイドの死」をきっかけに暴動が発生。アフリカ系アメリカ人を中心とした暴動は全米に飛び火し、内戦状態になった。

2020年大統領選でトランプ氏は敗北したが、支持者が「不正があった」と訴え2021年1月6日にアメリカ合衆国議会が開かれていた議事堂を襲撃している。

皮膚の色だけではなくイデオロギーなど、分断したことで両者の対立が「暴力」となって噴出するようになったのである。日本の場合も同様で、2012年末から約7年8カ月と憲政史上最長の「安倍一強」が続いた。その反対側では「安倍に対する批判は何で許される」という「反安倍無罪」を本気で信じるカルト集団が育ち「分断」状態となった。

このような「暴力」が生まれやすい土壌では、「暴力」を通じて自己欲求の達成を試みる憐れな虚無者が育ちやすい。この結果生まれた「虚無の殺人者」が山上であり、木村であり、トマスだ。

私の主張が間違いでないのは山上、木村の供述にある。山上は実家が統一教会の被害者であることを犯行動機とし、木村に至っては「黙秘」である。これまでのテロリストなら「安倍を殺さなければ世直しはできない」、「岸田を殺すことで多くの人を生かすことができる」など直接的な動機があった。ところが、山上、木村の両者共に自分の事件に直結する同機をまったく論理立てて説明できない。

そもそも、この連中にそんなたいそうなものはそもそも存在しないと私は見ている。ただ追い詰められて鬱屈した吐き出し口を「暴力」に向けただけのことだ。トマスについても「特定のイデオロギー」を持っていないことが明らかになりつつある。

まさに「虚無の殺人者」ではないか。

バイデン政権の情報戦が始まった

銃撃からたった2日後の2024年7月15日に始まった、共和党全国大会でトランプ前大統領が党大統領候補に正式に指名された。右耳にガーゼを付けた姿で登場したトランプ氏は自らが掲げる「強いアメリカ」の体現者だ。それゆえ大歓声が行われ会場には「USA」コールが鳴り響いたのである。

私が強い違和感を持って受け取ったのが、その2日後の同月17日に全米の複数のメディアで報じられた「アメリカ当局関係者発」というコンテで報じられた「イランによるトランプ氏暗殺計画を米政府当局が情報入手していた」というニュースだ。しかも「イラン」と狙撃犯のトマスの間に接点がないことが強調されている。

このようなことを報じる意味も効果もまったくない。考えられるのはバイデン政権の窮乏である。

トランプ氏暗殺未遂に対して「政権がトランプ氏の警備を緩くしたのでは…」という声は少なくない。それよりバイデン大統領の認知症問題はかなり深刻で、民主党内ではバイデン氏が選挙戦を辞退する「バイデンおろし」の声が日に日に大きくなっていた。

暗殺事件から生還したトランプ氏のカリスマ性は共和党に留まらず全米に広がっている。「イラン暗殺計画」のリークはそうしたムーブから、有権者の目を少しでもそらしたいバイデン政権の苦肉の策としか私には思えない。

「虚無の殺人者」による銃弾によって、トランプ氏の大統領選勝利は揺るがないものとなった。「もしトラ」から「トラ確」になった瞬間だ。

重要なのはこの政権交代の確定が世界再編を生むことだ。その衝撃は極めて大きい。極寒支持率で荒波の上の小舟だった岸田政権をいとも簡単にレームダックにしてしまった。

緊迫するヨーロッパ

共和党大会で大統領候補に指名されたトランプ氏は、副大統領にJ・D・バンス(ジェームズ・デイヴィッド・バンス)氏を選出した。

この人物から整理して行こう。

バンス氏の知名度を拡大したのは2016年に上梓した「アメリカの繁栄から取り残された白人達」という副題の付いた「ヒルビリー・エレジー」という回顧録だ。元海兵隊員である彼自身の経験や母親の薬物依存、貧しい幼少期などを描いてベストセラーとなった。

2022年の中間選挙でオハイオ州から上院選に出馬。トランプ氏の支持を得て当選を果たす。2024年7月18日現在で39歳の議会で最も積極的なトランプ擁護者の一人である

バンス氏副大統領選出にもっとも青ざめたのがヨーロッパだ。

ロシアによるウクライナ侵攻においてトランプ氏はアメリカによるウクライナ支援の停止ないしは大幅縮小を訴えている。バンス氏はトランプ氏以上のアメリカ孤立主義者で、次期政権ではほぼ確実にウクライナへのアメリカ支援は縮小する

このままいけばウクライナは領土の一部を奪われたまま停戦せざるを得ない。これはウクライナ一国の問題に留まらない。世界の在り方を変える大事件となる。なぜなら国連安保理体制が崩壊することを意味するからだ。

第二次世界戦後、侵略戦争は「起こらない」ことが前提だった。戦勝5カ国が国連から核保有を認められ、安全保障常任理事国に就くことで「国連安全保障体制」が構築されたからである。ところがその常任理事国が侵略戦争を起こしたばかりか、侵略を成功させてしうのだ。

核保有国は「攻めた者勝ち」が成立すれば、国連体制下の世界の安全保障機構は終了である。特にロシアと地政学的に近いヨーロッパは深刻だ。アメリカが対中国だけに集中すれば、ヨーロッパは独自に軍拡を行わなければならなくなるのだから、まさに「世界再編」だ

この再編は中東にも当てはまる。

中東ではイランとサウジアラビアがプレゼンスを競っているが、トランプ政権の中東外交の特徴は親イスラエル反イランだった。バイデン政権は親イランだが、アメリカが反イランになることでサウジ‐イスラエルは距離を縮める方向に向かう。

さらに親イスラエルということは、ウクライナ支援を減らす逆側でハマス戦争への支援が増える可能性は高い。しかも2024年5月の選挙でイランは親欧米政権が樹立したのだ。イラン‐アメリカの距離は今後次第ということになるが、中東地域での「再編」は確実に起こるということだ。

微中派・上川脱落

日本では岸田政権が吹き飛ぶことが確定的になった。というより、すでに党内では岸田交代が既成事実化している。アメリカが共和党から民主党に政権交代するのに際して岸田内閣の共和党パイプはあまりにも薄い。世界再編に備える意味でも岸田交代は確実ということだ。

ポスト岸田の候補の1人だった上川陽子氏も総裁レースから脱落確定となった。上川氏を支えていたのはアメリカ共和党の中でもヒラリー・クリントンの閥だからだ。

トランプ大統領確定で、上川氏の存在意義は皆無となったのである。

このヒラリー・クリントン閥の重鎮の1人が日本にLGBT政策を押し込んだラーム・エマニュエル駐日大使だ。その出自については『LGBT推進派の悪辣ぶりの本質は「ラーム・エマニュエル」を知れば明らかになる』で詳説したが、祖父はイスラエル解放の闘士で、親イスラエル派のラーム氏だが、極東地域の要衝で大使を務めているのにもかかわらずハマスによる攻撃をまったく防ぐことができなかった。

日本にとってもアメリカにとっても何の利益にもならない無能が去ることは福音であることは言うまでもない。

2024年7月16日にはトランプ氏が、台湾の安全保障について、

「我々は保険会社のようなものだ。台湾は我々に防衛費を支払うべきだ」と主張したインタビュー記事をブルームバーグが配信した。トランプ氏は、

「台湾は米国から半導体ビジネスを奪った。彼らは莫大(ばくだい)な富を得ている」

としている。

この批判はトランプ氏が得意とする「ディール(取引)」開始のサインだ。極東方面の暴力構造の再編は始まっているとみるべきだ。

実は現政権で最も太い共和党パイプを持っているのはトランプ政権時代に「経済安全保障」の課題を渡された高市早苗氏だ。ところが高市氏が総理になる可能性はゼロに近い。

この劇的な動きに現在の自民党が対応できるのかはかなり不透明という現実を皆さんは理解して衆院選選挙に票を投じるべきだと私は思う。

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