ポンコツ外相では抑止できない「ビジネス・マフィア 金正恩」の死の外交戦略
「ウクライナ侵攻」後の外交とは
前回の『北朝鮮ミサイル乱射祭りの裏にある「武器即売」の思惑』では、北朝鮮のミサイル乱射祭りについて解説した。2022年10月31日から11月4日まで行われる予定だった米韓の大規模な軍事演習に対するけん制が主な目的とみられているが、その後、現在の外交のリアルを象徴する興味深い展開をみせる。
米韓の軍用機240機あまりが参加する大規模訓練に対抗した北朝鮮は、同年11月4日に多数の軍用機を北朝鮮空域で飛行させ空対地射撃演習などを実施。対する韓国軍は最新鋭戦闘機F‐35Aなど80機を出撃させ、威嚇した。
米韓は北朝鮮のミサイル乱射祭りに対して演習の延長を決定。同年11月5日には米軍がB-1ランサー爆撃機を投入。B-1ランサーは超低空を超音速で飛翔する能力を持ち、中東など実戦で大きな戦果を挙げた。
そこで北朝鮮は同日の11月5日午前11時32分ごろから59分ごろまでにかけて4発の弾道ミサイルを黄海に向けて発射する――。
米韓と北朝鮮は、朝鮮半島で「有事前提」のチキンレースを行ったということだ。『「覇権と暴力の等価交換」によって「世界の警察」になったアメリカ』などで、「外交は暗喩の応酬」であることを解説した。
2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降、西側と権威主義国との「暗喩」は「言葉」だけでなく「暴力」を伴う必要が生まれた。だから西側はウクライナに「軍事物資」「情報」などの暴力を提供したのだ。
朝鮮半島で行われた「有事前提」の一食即発の暴力の応酬こそが、現在の権威主義国との「外交」のリアルである。すなわち外交と安全保障を連動させなければ、権威主義国を抑止することはできなくなったということだ。
「暴力」が不可欠だからこそ、最も必要なのは冷静に「敵の能力」を評価することである。北朝鮮のトップ、金正恩総書記は「感情的な暴虐者」とみられる傾向が強い。だが経歴を整理すれば、私にはエリート出身のビジネス・マフィアという像しか浮かばない。経済制裁を逆手にとって、地球上に残された「核開発の楽園」となり今日まで生き残っているのだから、その手腕を認めなければならない。
そこで今回は、金正恩氏の評価と導き出される「黒い戦略」について解説する。まずは林芳正外務大臣のポンコツぶりから整理していこう。