「食」から「暴力」のケータリングへと事業展開-プリコジンが満たしたプーチンの胃袋と懐

いまだ「謎」が多いワグネル内乱だが、首謀者・プリコジン氏がロシアに一時帰国するなど事態は混迷のままだ。「食のケータリング」で財を成したプリコジン氏は2013年以降、「暴力のケータリング」へと事業展開。プーチン傘下には「合法暴力VS非合法暴力」の優劣競争が起こったのである。暴力の世界に生きた私が導きだした「ワグネル・ショック」の深層とは――。
猫組長 2023.07.01
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ロシアが誇る「トロール工場」

前回の『ワグネル内乱首謀者が大枚を使ってもみ消したい「強盗・詐欺・婦女暴行」ギャング犯歴を全部書く』では謎に包まれたワグネルの創設者・エフゲニー・プリゴジン氏の「黒い過去」を暴露した。ソ連時代は一介のチンピラとして粗暴な犯行を繰り返しついに収監。出所とペレストロイカが重なりホットドッグチェーン店を開始する。

その後は「エリート」、「富裕層」に特化したレストランを経営。その顧客の一人が大統領を目指していたウラジミール・プーチン氏だった。

「学校給食事業」を通じてロシアの行政に食い込んだプリコジン氏の絶頂は、「軍」への給食事業参入だ。それを阻んだのが、就任直後のジョイグ国防相である。

内乱に向けてプリコジン氏はジョイグ国防相を猛批判したが、両者の因縁はすでにあったということだ。

そこで今回はプーチン大統領の「非合法暴力装置」である「ワグネル」が国際社会に華々しくデビューした2014年クリミア侵攻から現在までの流れを整理して行こう。

プーチン氏は「非合法暴力装置」である「ワグネル」と、「合法暴力装置」である「ロシア軍」を競わせていたとしか私には思えない。

シリアの一部や、アフリカのマリなどワグネルの影響力が強い地域は、ロシアの域外領土のようなものになっていた。プレゼンスを高める非合法暴力装置と、合法暴力装置の両者が「生き残り」をかけて、どこかでぶつかり合うことは必然だった。

前回も触れたが、問題は「ロシアの核管理」に移行しているというのが私の見解だ。プリコジン氏のチャレンジが決して「無謀」、「無策」と言い切れないのも「核管理」の問題がある。

スタンスの左右を問わず日本の言論界には「暴力」を知る人があまりにも少ない。このことに触れている言論があまりにも少ない。私だけが解説できる「プーチン式暴力装置操縦術」の生々しいリアルを伝えよう。

日本の皆さんの多くは「ロシアのトロール工場」についてまったく知らないと思う。

北欧神話に出てくる妖精で、ムーミンも「トロール」だが、ロシアの「トロール」はそんなかわいいものではない。

<a href="https://pixabay.com/ja/users/mollyroselee-9214707/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=8012851">Mollyroselee</a>による<a href="https://pixabay.com/ja//?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=8012851">Pixabay</a>からの画像  

MollyroseleeによるPixabayからの画像  

2013年、プリコジン氏は国際社会でも悪名高い、サンクトペテルブルクにある「トロール工場」を所有したことが明らかになった。この時点でロシアは、クリミア侵攻を「プリコジン氏を実働の中核に進めること」を決めていたということになる。

この解説から始めていこう。

近代戦術の中核「トロール工場」の正体

ロシア国内のSNSに、以下の求人募集が発信されたのは2013年8月のことだった。

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