英国の研究データが示した「国益型移民」と「不利益型移民」の素性
「不法移民による治安破壊」と「人権擁護」は同時に成立しない
前回の『移民・難民は本当に得か損か 自称・クルド人難民問題を社会コストから徹底考察した』では「移民問題」の入り口である「難民」や「不法滞在者」の社会コストについて解説した。用いたのは英仏海峡を渡って日々増加する不法入国者問題に頭を痛めているイギリスのデータである。
そのイギリスでは「人権」が障壁になって不法滞在外国人を「ルワンダ」へ強制移転させる政策が硬直してしまう。
「不法移民による治安破壊」と「人権擁護」は同時に成立しない「ジレンマ」である。この典型例がジョー・バイデン氏とドナルド・トランプ氏という2人の大統領候補による、アメリカのジョージア大学キャンパス内で起こった殺人事件を巡る見解だ。
移民大国アメリカの国論を2分しているのだから、ジレンマと言えるだろう。
日本でも、すでに「クルド人難民を自称するトルコ人」問題として「移民と人権のジレンマ」は顕在化している。だが移民問題は、今後、日本社会の多くの場面で問題化し、その度に深刻でホットな話題になることは間違いない。
その予測の証左となるのが「移民による治安維持破壊」推進派の急先鋒、日経新聞が配信した『見えてきた外国人1割時代 今は320万人、50年代に3倍超』というオピニオン記事だ。日本で暮らす外国人が国想定の1.5倍で増えているという。
記事の行間から「喜悦」があふれ出していると感じるのは私だけだろうか。朝日新聞の裏社是が「日本破壊」であることが大多数の健全な思考を持つ一般市民に共有されたが、10年もしないうちに日経新聞は朝日新聞と同様の扱いになると私は予想している。
こと「移民問題」では朝日、東京、毎日と日経、共同など多くのメディアが「移民の人権擁護=治安破壊推進」と同じ論調だ。左翼として日本破壊を目指す媒体と、経団連の御用聞きが、「移民」では団結しているのである。この異様なメカニズムについての解説は、次回以降に譲りたい。
さて今回は不法移民が起こした殺人事件を巡るバイデンVSトランプのバトルからはじめて、移民政策が本当に国民経済にとってプラスなのかを検証したい。感情ではなく冷静には前回予告した通りだ。そこでイギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの移民専門家による研究データを用いる。
この問題は「投資」と似ている。というのは短期で考える時と、中・長期という「時間軸」によって評価が入れ替わるからだ。つまり「移民」による社会コストに苦しめられるのは、むしろ、現在の若年世代である。
その意味では是非、背負わされる世代の皆さんに読んでいただきたい。移民問題を冷静に考え、選挙の争点の1つにして欲しいと思う。