国際情勢を知ることは「豊かさ」を得ることである

「猫組長POST」を始めるにあたって、国際経済、国際政治を理解することが、皆さんにとって「豊かさ」を得ることと直結しているという事実について解説するところから始めよう。
私にとっては「円安」と「インフレ」の発生をわからなかったことが異様である。
わかっていれば「防衛」できたのだから、苦痛など味わう必要がないのだ。
猫組長 2022.04.29
誰でも

官邸から「株価ボード」が取り払われた

物価と給与が同時に上昇する「健全なインフレ」に対して、給与が低いにもかかわらず物価だけが上昇する「不健全なインフレ」は「スタグフレーション」と呼ばれる。すでに私は新型コロナウイルスが感染拡大した当初の2020年4月に「スタグフレーション」の発生を導き出していた。

まるで「予想的中」を自賛しているように聞こえるかもしれないが、誤解だ。私は占い師でも、公営ギャンブルの予想屋でも情報商材屋でもない。2022年4月の「スタグフレーション」にたどり着いたのは冷静な視点で現実を分析して、合理的に導き出しただけに過ぎない。

一連の分析作業は投資家にとっての宿痾なのだが……。

「猫組長POST」で提供するのはただの「情報」「分析」「結果」だけではない。そうした「視点」を皆さんが持てるようになることが本質的な目的である。

不透明な時代にあって、未来を導き出せれば自分で自分を防衛することができるのだ。それが「豊かさ」への大きな一歩であると私は確信している。

2022年4月現在、日本では「円安」(下図参照)

「Googleファイナンス」より

「Googleファイナンス」より

と「インフレ」(下図参照)が発生している。

「Yahoo!ファイナンス」のデータを元に作成

「Yahoo!ファイナンス」のデータを元に作成

このことで日本政府に対するルサンチマンを募らせている人も多いだろう。

確かに岸田文雄総理は問題に対して「検討中」を繰り返し、意思決定が遅いことは事実だ。

また岸田政権発足時から日経平均は下向きで推移している(下図参照)。

「Googleファイナンス」を元に加工

「Googleファイナンス」を元に加工

このことについて「政権が市場から嫌われている」という観測が報じられているが、私は強い疑義を抱いている。

その根拠は岸田政権以降、官邸から「株価ボード」が取り払われたからだ。

岸田総理は市場から嫌われているのではない。そもそも政権中枢部が投資市場に興味が無いということだ。

日本経済新聞社とテレビ東京は2022年4月22~24日に実施した世論調査によれば、岸田文雄内閣の支持率は64%だ。極めて高い数字だが、その理由は「他に支持する政党がいない」という極めて脆弱なもので、この「消去法」に支えられていることを政権中枢は気にしているという。

一方「投資家」に限定した「支持率」は、まったく逆の結果になっている。もちろん「投資家」の支持率に岸田総理が興味を持つはずもないことは、いうまでもないが。

そもそも政治はあらゆる問題を解決する「魔法の杖」ではない。とはいえ、マネーに興味がない岸田政権にマネタイズ政策を期待するのはナンセンスだといえるだろう。

ということで、「自らは自らで助けるしかない」ということが導き出せるのである。

底の抜けたバケツを水で満たす

皆さんはこの「円安」と「インフレ」が突然発生したとは思っていないだろうか。状況を整理すれば「円安」「インフレ」の発生についてはいくつもの「ヒント」があった。すなわち2つの事態が発生することは2020年から確定的で、皆さんが防衛法を知っていれば「今日の苦痛」は回避できたはずだ。

そもそも「円安」が発生した原因は、2020年1月から世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大したことにある。コロナ禍によって人の移動が制限されたことで経済活動も仮死状態に陥った。その対応として参考にしたのが2008年のリーマン・ショックだ。

リーマン・ショックの時に最大の問題となったのはドル不足だった。新興国は自国通貨の価値を、保有している「ドル」によって担保する「ドルペッグ」としていることも多い。また石油、穀物など実体経済に必要な戦略物資や武器などは原則として「ドル」でしか決済できない。

元々は金融経済のショックだった「リーマン」の被害が実体経済にまで及んだのは、この基軸通貨「ドル」の流動性が下がったことにある。

リーマン・ショックが発生した2008年9月、アメリカの中央銀行にあたるドルの発行元FRBがECB(欧州中央銀行)、日本銀行、BOC(カナダ銀行)、BOE(イングランド銀行)、SNB(スイス国民銀行)の5つの中央銀行とドル資金を供給する「スワップ・ライン協定」を締結。

ドル不足が起きない構造をとって対応したのだが、この程度ではドルの流動性を回復することはできなかったのだ。

そこでコロナ禍では、2020年3月19日にFRBが、従来の供給構造に加えてオーストラリア、ブラジル、韓国、メキシコ、シンガポール、スウェーデンの中央銀行と各600億ドル、デンマーク、ノルウェー、ニュージーランドの中央銀行と各300億ドルのスワップ協定を緊急に締結した。

このFRBの動きにアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本、イタリア、カナダの主要先進国「G7」も連動。ドル融通の構造を「リーマン」以上に構築した。

さらに2020年3月24日には、G7の財務大臣・中央銀行総裁が、

「G7各国の中央銀行は、それぞれのマンデートと整合的に、経済及び金融の安定性を支え

るための金融政策上の措置の包括的パッケージを導入するため、異例の行動をとっている。

我々は、G7及び他国の中央銀行の間のスワップ・ラインを含め、流動性及び金融システム

の全般的な市場機能を向上させるための行動をとっている」

という声明を出す。要約すればFRBを中心にG7の中央銀行が大量のマネーを発行して世界中にばら撒くということだ。

出血点がわからない大量出血している患者に、強制的に大量の輸血を行うといえばわかりやすだろうか。あるいは底が抜けたとわかっているバケツに大量の水を注ぎ込んでいるといったらよいか……。

こうして人類の金融史に前例のない「規制緩和」が始まったのである。

2020年3月以降は社会全体に各国政府が発行したマネーが溢れることになった。コロナ禍によって実体経済が停滞しているということで、行き場を無くしたマネーが向かった先の1つが金融市場だ。

そして異様な世界が訪れた

目に見えてわかりやすかったのが株式などの投資市場や、暗号資産などの投機市場の高騰である。(下図参照)

「Googleファイナンス」を元に加工

「Googleファイナンス」を元に加工

「投資」とは「企業の成長」を期待して行う。前述したように2020年はほとんどの経済活動が停止していたのだから、企業が成長することはありえない。

特に注目すべきは「ダウ平均」だ。これは「ダウ工業株30種平均」で、まさに「実体経済」の成長を表す指標となっている。だが「ヒト・モノ・カネ」の移動が制限された世界で、どこに工業製品の需要が存在するのか。

この「ダウ平均」が2020年に上昇すること自体が「異様」だとしか言いようがない。

もうひとつは暗号資産だ。価値創造の構造もわからずにありがたがる人が多いが、「ビットコイン」とはネット上の情報に過ぎない。

「暗号資産=ビットコイン」と思い込んでいる人もいるかもしれないが、暗号資産は大きく2種類に分けることができる。一つが、決済システムとして、中央銀行や民間銀行などが開発している暗号資産。もう一つが「ビットコイン」などの投機性の高い暗号資産だ。

両者の決定的な差は「資産の担保」だ。

中央銀行や民間銀行の開発する決済システムとしての暗号資産は発行主体が明確で、国家が発行する自国通貨やドルなどの「強い資産」によって価値を担保している。

こうした暗号資産は、ほぼ現実の通貨同様に価格の変動幅が少なく「ステーブルコイン」と呼ばれている。

対して「ビットコイン」などの「非ステーブルコイン」は、発行主体が何を担保にしているの

かが明確ではない。

2021年7月現在、日本では国家が価値を担保するステーブルコイン型の暗号資産は存在しない。ということで「資金決済に関する法律」では「暗号資産」が、次の性質をもつものと定義されている。

①不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる

②電子的に記録され、移転できる

③法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない

法定通貨によって価値を担保されていないので「通貨」でも「準通貨」でもなく、「資産」ということだ。

すなわち投機対象としての暗号資産「非ステーブルコイン」は出所不明で、発行主体もなく、裏付け資産もない。高額で取引される「ビットコイン」とは、実は「子供銀行券」となんら変わらない通貨もどきの「何か」ということになる

ところがその「子供銀行券」はボラティリティを生む2つの要素を持っている。

一つは交換所などを通じて現実の通貨「ドル」と交換することができる点だ。もう一つは、発行枚数上限が2100万枚と決まっている点である。この特性によって、需要と供給のバランスが大きく崩れた時、ビットコインのボラティリティが大きくなるのである。

「富」を担保するものは存在せず、「価値があるかもしれない」という幻想が価格を高騰させてきたということだ。濁流のようにあふれかえるマネーが、その「幻想」を「神話」まで増幅させた結果、ビットコインが暴騰することになったのである。

こうした異様な事態は金融に留まらない。というのはアメリカの実社会が「楽園」となったからだ。

2020年6月9日には、アメリカの上院金融委員会で2000万人が受給する失業保険が問題視された。

コロナ禍前の労働者の平均給与は週給981ドル、飲食を含むレジャー、接客業が同434ドル。ところが失業給付は同1000ドル弱に跳ね上がったのだ。

市場にあふれ出したマネーによって働かなくても週約10万円を貰える世界は「ユートピア」といえるだろう。

まさに「異様」としかいいようがない。

この物理世界に永久機関が存在しないように、マネーだけを刷り続けて成立する楽園は存在しない。その反動が他ならぬアメリカを直撃し始めたのである。

***

次回は規制緩和と「脱ゼロコロナ」による回復、そして「環境政策」による「ESG投資」増加によって「インフレ」が発生するプロセスを解説する予定です。

2022年4月以降の日本経済を不透明にしている最大の要素は「ウクライナ侵攻」なのですが、無料版では「ウクライナ以前」の流れを3~4回に渡って解説。それ以降は「有料版」に切り替えて、リアルタイムの情報と分析をお届けします。

冒頭でも書きましたが、「猫POST」で提供するのはただの「情報」「分析」「結果」だけではありません。正しく「今から少し先の未来」を導き出す「視点」を皆さんが持つようになれることです。

「ウクライナ侵攻」は無料版で解説する予定の「異様な世界」と連動しながら発生していますので、是非、有料購読への登録をよろしくお願い申し上げます。

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