「FTX破綻と暴落」が示すのは暗号資産の「健全化」である
進化と「左右のロジック」
前回の『Microsoft「ウクライナ・レポート」が示す米ビックテックの近未来像』では、政治や思想を表す「右」「左」とは違う意味で、
・歴史によって積み挙げられた伝統や習慣、国家などの「存在」、すなわち「レガシー」を「右」
・その「右」の変革を試みる「動き」を「左」
とした。
その典型例である『Microsoft』の歴史を振り返りながら、イノベーションが既存の社会の中でスタンダードに転換される構造を解説した。
繰り返しているが2022年は、この10年間に「左」が生んだイノベーションを「右」が精査する年だ。人類はこれを繰り返しながら進化してきたのだが、以降、これを「左右のロジック」とする。多くの説明に当てはめていこう。
前回の最後には2つのテーマを予告した。1つが「暗号資産」、もう1つがウクライナ戦争をきっかけにしたテック企業の近未来である。
いずれも2022年に起こったことだが、今回は前者から整理していきたい。というのは2022年に暗号資産が暴落し、同年11月には暗号資産交換業大手の「FTXトレーディング」が破産。FTX関連企業も次々と連鎖して破産している。
FTXの創業者・Sam Bankman-Fried氏
これをもって「暗号資産冬の時代」を主張する人が後を絶たないが、私はこの見解に強い疑義を持っている。
そもそもなのだが暗号資産に「冬」も「夏」もない。こうした主張をする人たちはフィンテックが生み出した技術「暗号資産」を、ボートレース場の舟券や、丁半バクチと同じように考えているとしか思えない。
暗号資産がギャンブルに過ぎないことはTwitterや、『ダークサイド投資術 元経済ヤクザが明かす「アフター・コロナ」を生き抜く黒いマネーの流儀』(講談社)など多くの書籍を通じて伝えた。
そのたびに「意識が高い」「感度が高い」と錯覚した人たちの批判を浴びることになる。
どこの世界にパチンコ、公営ギャンブル、違法カジノで財産を作れると信じている人がいるのだろうか。儲かるのは常に「胴元」だけで、プレイヤーはただ吸い上げられるのみである。
そもそも暗号資産の暴落は2019年に決定していたのに…。
2022年の暗号資産ショックは暗号資産という「左」が生み出したイノベーションが、歴史・伝統という「右」に精査されたことに過ぎない。「精査」を通じて暗号資産は社会のスタンダードになると私は考えている。同時に、暗号資産は次世代の国家の趨勢を決定する「技術」の方向性を示している。
そこで今回から「暗号資産」について解説しよう。まずは「暗号資産」の歴史を振り返るところからはじめたい。「猫組長POST」では触れてきた部分も含まれている。だが、複雑な問題を理解するためには、まずは基本。ということで、改めて整理して行きたい。
2022年11月9日に日経新聞は「仮想通貨、ステーブルじゃなかった 価値ほぼゼロに」と題した記事を配信した。記事中では暗号資産が、
「ステーブル(安定している)と信じてしまった」
と嘆く、資産を溶かした40代女性が紹介されている。「ステーブル」の意味さえわからない程度の認識で、2020年以降にバクチに手を出したことに目眩を覚え、無知が豊かさを既存することを再認識した。「億り人」などという戯れ言に踊らされて保有資産を溶かした人たちが、二度と「養分」にならないためにも、是非、読んで欲しい。