哀しきヒットマン逮捕で浮上した六代目山口組の分裂解消への道筋
「分裂」の時に起こるのが情報戦
前回の『米国に資産没収された私が導き出す2025年の「もしトラ」』では、2024年11月の大統領選でドナルド・トランプ氏が2024年大統領選に勝利した後の近未来を、「暴力」という視点を交えながら予測した。
「猫シミュレーション」の方向性の正しさを証明したのが自民党の元幹事長、甘利明氏だ。2024年2月11日にフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に出演した甘利氏も「安倍晋三元総理」不在のデメリットを主張。私が書いた危機意識とまったく同じである。
断言してもいいが岸田文雄総理では、トランプ氏をコントロールできない。ただし大統領戦後に岸田氏が「総理」でいられる確率は極めて低い。だったら早く総理の椅子から離れれば…と思うのだが、権力にしがみつく力だけは強いのが岸田総理の特徴だ。
その結果、政権どころか自民離れまで進んでいる。政治は混乱するばかりだ。
こうした政治混乱が強く影響するのが外交である。資源・エネルギー貧国でありながら、「軍」という暴力保有を憲法で否定した日本にあって、外交は生命線だ。ゆえに外交の停滞は国益の損失となる。
首を傾げる人もいるかも知れない。だが1994年からの自民党、社会党、さきかげによる「自社さ政権」そして、2009年からの「悪夢の民主党政権」という外交停滞の現実があってではないか。ことこまかに起こったことを書きたいがあまりに長くなるので割愛する。興味のある人は両政権の時系列を整理しながら、下の日米土下座外交史を照らし合わせて欲しい。
日本政界の混乱期にあって中国は台湾侵攻の野望を隠していない。こういう時に中国側がしかけてくるのが情報の武器化による認知領域への攻撃激化、そして攻撃の常態化である。
民主主義は世論によって支えられている。「世論」を攻撃した方が、軍事オプションよりはるかに低コストで勝利を達成できるのは自明の理だ。ところが「表現の自由」や「人権」という巨大な壁によって日本では警察や防衛系も含めて「情報戦」に極めて弱い。研究どころか教育さえされていない分野だ。
そこで皆さんにご紹介したいのが「暴力団の情報戦」である。暴力団は情報と実暴力をハイブリッドさせて実戦に応用している国内唯一の集団だ。
その好例として、今回は現在進行形の暴力団の最新動向を解説する。解説の理想モデルとなったきっかけは2024年2月1日未明の絆會・金澤成樹若頭こと金成行(きん しげゆき)氏の逮捕である。
殺人未遂容疑で全国に重要指名手配されていた金澤若頭だが、潜伏先の仙台市のアパートに閃光弾が放たれ、警察が突入する物々しい逮捕劇となった。
この事件の背景はかなり重厚で複雑だ。情報と暴力の連動を示す好例だと私は評価している。
私自身、昔住んでいた世界のことをこってりと書くのは久しぶりだ。極道業界をまったく知らない人にもわかるように図解を用いて解説しよう。
暴力と情報がどのようにハイブリッドして利用されるのか、また、組織同士の摩擦の真ん中に生まれる「狂戦史」の「哀愁」もお伝えしたい。「ゴッド・ファーザー」を彷彿させるが、この話は現実だ。ことは六代目山口組の分裂に遡る――。